【DA2】ベスとカーヴァー
昔まだF1を真剣に観ていた頃、フジテレビの放映時間(だいたい録画で深夜放送)まで、他局のテレビも、駅売りの新聞すらも決して目にしないようにしていた。
他局他系列だと、(商売敵のコンテンツのネタバレをするつもりだったかどうかは知らないが)平気でレース結果を出してたからね。
結果のわかったレースやゲームの録画を見るほど退屈なことはない。
映画シリーズも大変好評な、某大人気ファンタジー小説を最後まで読んでいる方はすでに沢山いると思います。こちらはネタバレを怖れてそういう方とはできるだけその手の話をしないようにしていました。
ところが世の中は忘年会シーズン。
製作予算の半分がその人のギャラじゃないかと噂される某人気男優主演の、黒木メイサさんも出ているあの特撮邦画(自分は観ていない)は実はしょうもないんじゃないかとか、すでに観た人たちと話をしてかなり盛り上がっていた。そっちはネタバレもなにも中身最後まで知ってるし、と気にせず話していて、勢いで(自分は結末を知らない)ファンタジー小説のほうの話題を出してしまった。
「最後に誰それが死んじゃうんじゃないかと気が気じゃないんだよね」と口走ってしまったのです。
そこで、結末まで読んでいる女性が真顔でいわく。
「大丈夫、死なないから」
一緒にいた全員が大爆笑。
ネタバレだっつのw。
推理小説に凝り始めた子供の頃、熱心に読んでいた作品のネタバレを、相当立派な大学の学生になっていた従兄弟からいきなりされて、本気でガックリきたことがある。
だからネタバレってのは知性(インテリジェンス)だけあっても回避できない、つかむしろ理屈上、知性が高い人のほうが知識も豊富なわけだからヤバイかもしれない。
逆にお利口だからといって詐欺にひっからない保証もないわけだ。そういう人は気をつけましょうね、といっても自分だけは大丈夫と怒られるから放置しておく。
ネタバレは英語ではSpoiler、スポイラー、台無しにする人(もの)といいます。これも考えようによってはハラスメントですよね。
パワハラ、セクハラ(の防止)と同様に関係性の話、常に他者を意識して自己の言動を操作する必要のあることなので、その巧拙は知恵(ウィズダム)によるんでしょうね。
逆に言えばハラスメントを(意図せずに)しばしばやらかす人というのはそこがズッポリ抜けているともいえる。意図してやってたらそれはゴロツキ、ならず者、一兵卒、官房長官、大将軍様などといいます。はい、ここは意図して書いています。
もちろん、自分がそんなにウィズダムに満ちていたらこんな場末で、しかもネタバレのブログなんか書いていないw。「自分だけは大丈夫」なんて間違っても思わない、それだけは気をつけるようにしています。
日本語には「小賢しい(こざかしい)」という、とてもいい言葉があります。ネット辞書に「狡猾」などと意味が書いてあるのはあてにしてはいけない。本当に狡猾なんだったら見破られないわけだから、そう呼ばれている時点でもうアウト。もっぱら「利口ぶって差し出がましい、でしゃばり、知識からまわり」などの悪い意味ですね。
馬謖(ばしょく)の生兵法の物語があまりに有名。三国志ではそれから「鶏肋」(けいろく)の逸話なんかもご存知の人多いかな。
「お利口さん」も文脈ではネガティヴな意味になる、つか、お子ちゃま以外に使ったら必ずネガティヴですね。日本語もとてもウィズダムに満ち溢れていることがわかります。
この記事は、そこまで壊滅的なネタバレには全然ならないだろうが、ちょっとしたDA2のネタバレになるかもしれないので潔癖症の方はご注意。つかネタバレ潔癖症の人はネットで関連ブログ読んだりしたらダメw。
ただし「ネタバレ」そのもの、あるいは「メタゲーム情報」について含蓄のある話もしているので、無視するのは惜しい。
「続きを読む」の下。
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消化不良のまま放置していた公式フォーラムのネタ。The Escapistのプレヴューを読んでからでないと意味がつかめなかった。
http://vanitie.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/da2-de64.html
The Escapistのプレヴューは過去記事で超訳しておいたので、ここの激論の意味がだいぶとれるようになった。
数回前の記事で紹介しましたが、DA2のフレンド/ライヴァルの関係について触れられていた部分で、こういう記述がありました。
「ゲーム冒頭のコンパニオンは、実は主人公の(クラスによって決まるのだが)弟か妹のどちらかなので、これはとても面白い選択になる。ご想像のとおり、兄弟姉妹の間にはありとあらゆる種類の情緒的な葛藤があるわけだから」
明らかになったのは、主人公ホークがメイジの場合、冒頭つき従うのはウォーリアーの弟カーヴァーのほう。ホークがウォーリアーかローグの場合は、メイジの妹ベサニーのほうであるということ。
「新事実」であったこの部分をあえてブログでなぞらなかったのは、実はこれだけで妄想を広げると収拾がつかなくなるから。
案の定、公式フォーラムではみんなすっかり食いついています。
まず「ベサニー(メイジ、妹)とカーヴァー(ウォーリアー、弟)は、ふたりいっぺんには決して登場しない、排他の設定なのか?!」という驚愕の声からスタート。
やがて「BioWareはプレイヤーにコンパニオンを選ばせないつもりか、け、けしからん!」、「おいら男性メイジでしかプレイするつもりがないが妹(ベス)が欲しい。そうできなきゃ許さん!」、「メイジだけのパーティーが組めないようにするなど暴挙だ、ありえん!」といつものように一部の者たちが大音声(だいおんじょう)を上げる。
私がThe Escapistのこのくだりを読んだときには、「ああ、双子って設定はそういうことだったのかよ!」と腑に落ちたのでした。このふたりの登場が排他で、どちらか一人しかコンパニオンにならないのであれば、やっぱ設定は双子とかにしたくなりますよね。表面上でも損得がないように見せたいですよね。
私が妄想を広げると、最後はどちらかが死ぬ(ネタバレではない、あくまで私の妄想だ)、あるいは最初から死んじゃうのかもしれない。そういうパターンも存在しそうなんで、敢えて妄想の連鎖思考を遮断したのでした。
ある開発者は「主人公のクラスによって弟か妹のどちらかに決まるのであって、主人公の性別と関係はない」 とコンファーム。
(選択も許されずプロットの神の決めたことに従わなきゃならんなんて、ありえない)という声に、ゲイダー氏登場。
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君が本気で心配すべきことではないし、我々のデザイン上の判断によるものだ。君がどっちのキャラクターを好むかは、プレヴューから得た情報と、ベス・カーヴァーに関して君が置いた前提に基づくメタゲーム的な発想によるんだと思うが、(訳:予備知識なしに)ゲームをはじめてプレイした者はそんなことは知らないんだよ。
たった今会ったばかりのキャラクターについて、そんな選好をさせることができるわけないだろう? ただ闇雲に決める以外に方法はなく、その選好が間接的には結局同じ結果となる、というのもこれまた安上がりのご都合主義(cheap)ではないかね。実際には君は二人並べてみてどちらかを選んだわけではないんだが、もしそういう選択をすることができたとしても結局同じ帰結を生むという意味だ。
これはストーリー上の要請によるものなんだ。そして私個人が大変気に入っているのは、ベサニーとカーヴァーのどちらも、ひとりの確固たるキャラクターとして造形できるという事実、さらには、ストーリーの冒頭でいきなり殺されてしまうことのない主人公の家族をそのストーリーに参加させることができるという事実もそうだ。
まだ会ってもいないキャラクター、知りもしないストーリーについて最悪の場合を思い煩うのはやめたほうがいいと忠告すべきだろうが、もちろん誰にでも突拍子もない結論に飛びつく権利はあるよね。
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当然私も気になるのは、「ふたりともストーリーのある時点でドラマが起きるまではホークと一緒にいるのか、ある時点でどちらかがいなくなるのかどうなのか?」ということですが、これについてもゲイダーさん。
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(もしプレイヤーに選ばせることもしないコンパニオンが途中で死んじゃうなんてことになったら、Awakeningのあのキャラクターみたいに勝手に登場して勝手に死ぬようなことと、一体どこが違うの? どうやって感情移入しろと?)
どちらかの弟妹がパーティーに参加するとか、プロローグ以降も登場するなんてことは一度も言ってないよ。今どっちが気に入っていると決めているなら、それは・・・、何に基づいて決めたの? 見かけ? 画像何枚かだけ見て? ストーリーの文脈に従ってどうすればいいのかを決めているのであって、プレイヤーに気まぐれな選択をさせるためにやってるんじゃないよ。悪いが、そこは譲れない。
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ベサニーとカーヴァーがプロローグだけ登場する、いわばチュートリアルのみのキャラクターとも受け取れる言い方をしていますが、ゲイダーさん一流の言い回しであって、「登場するかどうか誰も言っていない」とだけ言っているんですねw。
発表された映像・画像ではベサニーやカーヴァーが(プロローグとは思えない場面で)戦っていたり登場したりしていますが、それら素材が果たしてゲームの最終版のものかどうかはわかりません。
まだまだこれじゃ収まりがつかない一部の連中は食い下がる。
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(気まぐれな決定をしておいてここで討議する気はないんだな。個人の嗜好など千差万別なのに、メタゲーム上のメレー・メイジの組み合わせを勝手に押し付け、ゲームプレイに制約をはめてるだけだ、という、言ってるお前何様?というような意見にも答えるw)
決定は気まぐれ(arbitrary)なんかじゃない。すでに理由は説明した。私に討議する気がないとしたら、君たちの討議のベースが仮定・前提でしかないからだし、私がスポイラーにならないように話をすることができないからだ。また、「ゲームプレイのヴァリエーションを制限する」どころではなく、主人公のストーリーに絡んでくるふたりの、人格を完全に有するキャラクターたち(two full characters)を登場させるとも述べた。そうしたければ我々はたったひとりの兄弟姉妹だけで打ち止めにしたってよかったんだ。
すべて仮定と前提に基づいた独自のストーリーが頭の中に全部できあがっている人もいることはわかるが、我々はなにも約束はできない。それらのキャラクターに関係するストーリーのヴァリエーションは広く、私はプレイヤーが最後にはそれをわかってくれると信じてる。
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「いつもはBioWareのDA2のデザインを必死に擁護したり、あるいは無差別(どうでもいいと思うこと)だったりする連中が、これに関してはかなりの者が、たとえ少しずつでもイライラしてるのは、ちょっと笑えるよね」という皮肉の声には他の開発者が、「開発者としての戒めの言葉をかみ締めてるよ。万人を満足させることなんてできないからね」
必死な人ってのはどっちに転んでも怖いよ。一番アンチになり易いのは熱狂的なファンだもんねw。あ、フレンド・ライヴァル関係ってそういうことか!(今気づいたw)
ただし、BioWareも情報の出し方は考えるべきだったかな。これまでの情報は、当然ベサニーもカーヴァーもフルタイムで自由に選べるメンバーだと勘違いしやすい提示方法だったもんねえ。
ここで、ゲイダーさんとは違うライター、クリスチャンソン氏(Lukas Kristjanson)が珍しく登場だ。確か記憶をたどるとDA:OではレリアナDLCのライターだったかな・・・。確認中・・・、コンファーム。"Baldur's Gate 2"以来数多くのBioWareゲームのシナリオ作成に参加しているベテラン中のベテランだ。レリアナDLCは、DA2がMEシリーズのヴォイスオーヴァーやダイアログ・ホイール(パラフレイズ方式)を借り受ける際のプロトタイプとして作られたものだが、そのノウハウの伝授は彼に多くを拠っていたようだ。
めったにフォーラムに出ない彼がわざわざご足労というので読んでみよう。
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「どっちがお得?」という、これまたメタゲーム的発想の質問には、別な開発者が「プロットの広がりもキャラクター成長もユニーク(固有)なものだし、どっちが得とか損とかになる心配はないよ」と答えていますが、それは関係ないという次のご意見。。
(メイジ主人公しかアリスターをウォーリアー・ローグ主人公しかモリガンを仲間にできないとしたら・・・。皆(私だけかもしれないが)キャラクターメイクの画面で、メイジをプレイしたいけど、アリスターはいらないかな、モリガンがいいかなと悩んでしまう。キャラクターメイクは自由にしたいけど、私の主人公のクラスは今や「誰が生きるか死ぬか」によって規定されてしまった。冗談抜きで。ゲームの楽しみだった部分が、プロット上の要件にされてしまったみたいね)
ここでクリスチャンセン氏。ゲイダーさんに勝るとも劣らないウィズダムに満ちた発言です。
ああ、でもOriginsをある方法でプレイすれば、アリスターやモリガンの君への対応も変わるし、キャラクターが死ぬことだってあるよね。そういうことを一回目のプレイスルーを遊ぶ際に知っていました? それらを知ることによって二回目のプレイスルーを変えたりはしなかったかな?
君はフォーラムにいるんだよね。ということは、君は実はもうメタゲーム的には二回目のプレイスルー中なんだよ。実際のゲームを、情報から孤立した状態で最初にプレイしたときには、君は君のキャラクターの受身の体験に非常に近い感覚を覚えるわけだし、それらの間に断絶はないんだ。
だが事前に情報を収集することによって、君はゲームを自ら変えてしまう。君がこう楽しみたいと決めたある楽しみを制御するメカニズムを先に知っているということは、それらに受け身で反応するのとは全然異なる体験をすることになるわけだ。
君は自分のキャラクターをこれから形作っていくんじゃなく、あらかじめ自分で決めたキャラクターをプレイすることになる。それがある点を越えると、我々がゲームを作る際に行った決定ではなく、君の先入観が支配することになる。最終的に君があまりに多くの情報を得ることによって、君のDA2の最初のプレイスルーは実際には二回目のプレイスルーに変容してしまう。もちろんこの場合の「最初の」プレイスルーは実際には存在しないんだけどね。
カーテンをあまりに開けすぎてしまうと(私のように最初からカーテンの裏側で働かなきゃならない身はさらに不幸なんだが)、最終的に君はそういうことをすべて反射的に(by reflex)済ませるようになる。背景設定やメカニズムなどを知らないうちにはゲームをプレイもせず、映画を観もせず、本を読みもせず、ネットワークテレビを観もしない。その他好きなメディアをあげてもらっていいが、自分にとってあまりに明白な物事を、どうして他の人はわからないんだろう、と不思議に思うようになる。
ここら辺まで行き着いた人は、大抵は自分初の「どうして、かつてのような(好きなものを挿入)を作ってくれなくなったんだろう」という書き込みをフォーラムにするようになるんだよね。
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語り口は落ち着いてますが痛切ですねえ。目からうろこポロポロ落ちた。
これ、立派なオタク考になってますからね。
JRPGの今の悲劇というのも、ここに原点があると思いますね。作り手が自縄自縛っていうところが違うけど。
「こんなのFFじゃないっ!」とかね。努力は認めようよ。漫然と同じもの作ってるんじゃないんだから。ただそのリスクは大きく、変わり方が派手に外れることも多いんだから。
逆に「これぞ王道!」とか、20年間何も変わってないって意味ですしね。
これでもう勝負あったと思うんだけどねえ。
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先のクリスチャンセン氏が回答した方(Wikiのアドミンのひとりだそうだ)が、「今までBioWareゲーム内でキャラクターが生き死にする局面を自分が避けてきたのも事実だし、スポイラーだらけのフォーラムに好んで来ているのも事実。気に入らないけど、小さな問題ということにしておくわ。BioWareがPCゲームを破滅させるわけでもなく、デヴィッド・ゲイダーが個人的に私をキライで、苦しみを与えようとしてるわけでもないでしょうから」
最後、ゲイダーさん。
イヤ、実は苦しませようとしてるんだけどね。多少はね。
選択の自由が奪われたと考える人がいるのは面白かったけどね。そもそも選択なんて最初からできないんだ。そしてMass EffectのVirmireでの決断と比較する問題でもない。あっちはキャラクターたちと深く知り合えるチャンスを与えられたずっと後、ゲーム終盤で行わなければならない決断だ。
まず一部の人々には、先入観を捨て去る時間を持って欲しい。この話をしばらくほおっておいたらどうかと思う。
実際ストーリー上は、これは非常にクールな要素なんだ、とりわけストーリーに他の何よりも重きを置く人にとってはね。誰が生き残るかは個人的にゲームを楽しめるかどうかには究極的には無関係だ。いずれわかってくれると思うけどね。
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